【法文】
(先使用による通常実施権)
第79条
特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
【判例】
「ウォーキングビーム式加熱炉事件」
昭和61(オ)454 先使用権確認等請求本訴、特許権・専用実施権に基づく差止・損害賠償請求反訴
裁判年月日 昭和61年10月03日 裁判所名 最高裁判所第二小法廷
『・・・同法(特許法)七九条にいう発明の実施である「事業の準備」とは、特許出願に係る発明の内容を知らないでこれと同じ内容の発明をした者又はこの者から知得した者が、その発明につき、いまだ事業の実施の段階には至らないものの、即時実施の意図を有しており、かつ、その即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明されていることを意味すると解するのが相当である。』
『特許法七九条所定のいわゆる先使用権者は、「その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において」特許権につき通常実施権を有するものとされるが、ここにいう「実施又は準備をしている発明の範囲」とは、特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり、したがつて、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である。』
追補:
【論説】
知財管理 2008年4月号(Vol.58 No.4 2008)、p.483-490
「先使用権とその立証準備」(窪田英一郎氏)
※ノウハウとしての技術保護に関して、「事業の準備」が問題となる場面に備えての先使用権の立証準備などについて論述。
椿特許事務所