C・ブコウスキー「死をポケットに入れて」
お盆は5連休をとった。たったそれだけ?といううらやましい人もいるだろうし、ヒマ人は休めていいよな、というあまりうらやましくない人もいるかと思う。個人的には、独立して事務所を開いてからあまり休みらしい休みをとったことがなかったので、「充電」として価値ある休日となりました。安息の日の重要さと、休みらしい休みをとることの喜びを改めて思い知りました。
昔、カナダ人弁護士のT先生も話していたけれど、日本の夏のお盆は独特の文化であり、趣深い。こんな季節だからこそ、すでに故人となって「あちら側の世界」に行ってしまった身内や知り合いのことを思い忍んで静かに時を過ごす(高校野球やプロ野球に加えてオリンピックもあったりと、なかなか静かに落ち着いて過ごせなかったりするけれど)。正直日頃は、故人のことを思い出す機会が少なかったりするので、この時ぐらいは、と思う。
その、「あちら側の世界」のことを、僕たちはまるで他人事のように考えるのだけど、自分も(そう遠くない将来に)そちらに行くことになっていることや、気の合う人も苦手な人も含めて周りの全ての人がみんな、そちら側に行かなければならないことについて改めて考える。心からそういったことが理解できるようになるならば、人のことを憎んだり恨んだり妬んだりすることや、くだらないものを求めて一生を終えることはなくなるのかもしれない。
ふと思い出して、書棚からチャールズ・ブコウスキーの本を取り出し、その力強い文章を味わう。当り前のことが書かれているのだが、ブコウスキーが語ると重みを感じる。ぱらぱらとめくって、心に残ることばを以下に引用しておく。
「わたしたちは紙切れのように薄っぺらい存在だ。わたしたちは何割かの確率で訪れる運に頼って一時的に生きているにすぎない。このかりそめだという要素こそ、最良の部分でもあり、最悪の部分でもある。そしてそのことに対して、我々は何ら手出しができない。」
「この人間どもみんな。彼らはいったい何をしているのか? 彼らはいったい何を考えているのか? 我々はみんな死ぬのだ、誰だろうと一人残らず。何たるばか騒ぎよ! そのことだけでわたしたちはお互いに愛し合うようになっても当然なのに、そうはならない。わたしたちはつまらないことに脅かされたり、意気消沈させられたりし、どうでもいいようなことに簡単にやっつけられてしまう。」
(チャールズ・ブコウスキー「死をポケットに入れて」、中川五郎訳、ロバート・クラム画、河出文庫より引用)
椿特許事務所
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