O大学大学院レポート課題
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4.(1) コンピュータプログラムは、現在の日本国では、発明として及び著作物として保護されうる。それぞれがどのように保護されるかを簡単に説明し、両者の違いについて説明せよ。
(2) 特許請求の範囲に、「ソフトウェアを組み込んでおり、そのソフトウェアを実行することにより、ある一連の処理を実行する『装置』」が記載されている甲の特許権が存在する場合に、乙が当該ソフトウェアを生産する行為は特許権の侵害となるか。場合に分けて説明せよ。
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【出題意図】
著作権としての保護、および特許権としての保護が可能なコンピュータプログラムを介して、特許法と著作権法との違いについて復習する。また、間接侵害の適用要件、論点について復習する。
【講評】
(1)について
・記載しようと思えば、相当の分量の事項を記載することができる問題である。問題文中の、「現在の日本国では」、「簡単に説明」の通りに、記載すべき重要な点を限られた時間内にピックアップし、限られた文字数内で論文(レポート)としてまとめる能力を問う。
・「発明」と「著作物」の保護の違いについて重要な点(保護の内容、保護の要件(保護の対象)、保護期間、保護のために権利者側に必要とされる手続き)など、特許法と著作権法の条文を対比させながら説明する。
・分量的に記載すべきことが多いので、審査基準、学説、判例、時代背景などにとらわれすぎて、もっとも重要な部分である現在の法文の説明がおろそかにならないようにする。根拠条文を的確に挙げながら説明するように。
・保護の内容としては、発明が技術的思想(アイデア)として保護される点と、著作物が原則として、コピーライト(著作物を複製する権利)として保護される点の違い、独自に作成したプログラムに他者の権利が及ぶか否かの違い、人格権が保護されるか否かの違い、など重要事項であると思われる。
・保護要件(保護の対象)として、著作物の定義、著作権法10条3項に規定される適用除外、特許法に規定される発明の定義、さらには発明が保護されるためには新規性・進歩性などの要件が必要とされることなど。また、権利付与のために、審査が必要となるか否かなど。
・保護期間に関して、著作物の方が保護期間が長い点。そもそも50年前のプログラムをわざわざ複製する人がいるのか(そこまで長い期間の保護の必要があるのか)という話も当初あったが、例えば、コンピュータゲームプログラムの分野では、古いPC、家庭用ゲーム機、およびアーケードゲーム機のソフトを現在のPC上で動作させるエミュレータに関する著作権問題、ROMからのソフト吸いだしに関する著作権保護の問題(いわゆる「マジコン」の問題など)がある。映画も音楽も小説も漫画もコンピュータゲームも、古いから価値がないということは全くなく、この点、他の著作物と同様に扱ってよいものと思う(22世紀の人間も、初代ドラクエで遊ぶのだろうか?)
(2)について
・直接侵害が成立しない点に触れ(均等論侵害も不成立との結論でよい。)、101条1、2号のそれぞれの適用要件を満たすか、について論述する。
・論点として、1号条文中の「のみ」の文言をどう解釈すべきか、2号の適用要件をどう解釈すべきか、など。特に前者は、一眼レフカメラ事件、製パン器事件などの判例について理解する。
・間接侵害に関する、独立説、従属説について理解し、間接侵害をどのように解釈することが妥当であるか、各自の考えをまとめておく。
・他、乙の行為が、業としてでない場合、試験研究のための実施である場合などにも述べておくことが望ましい。
椿特許事務所
弁理士TY