「合格への道程(平成9年合格体験記)」 (Y塾発行)
(前号からの続き)
4.選択科目について
選択科目については人それぞれだと思いますが、計算主体の科目のように基本書を数冊理解すれば後は応用力で何とかなる科目と、範囲が広く様々な本を読まなければならない科目とに分けられると思います。私の選んだ科目の中で測量学は前者のパターンであり、土質工学と農業機械学は後者のパターンでした。
(1)土質工学
土そのものを対象とする部分と、土木技術に関する部分とから出題される科目です。私は、土木技術についてはほとんど無知でしたが、土関係については大学である程度学んでいたため、割合楽に進みました。本試では90~100点くらいとれたと思います。幅広い知識を修得する必要があるため、多くの本に目を通す必要があると思います。非常に奥が深く難解な学問ですが、試験で出題される問題のほとんどが基本的なことなので、基礎さえしっかりできていれば高得点が狙えるものと思います。
1から始めるためには、先ず入門書や基本書の中から気に入ったものを選び、ざっと目を通し、概要をつかんだ上で、過去問に目を通し、出題傾向を研究する(出題されていない難しい計算は思い切って捨てる)。時間の許す限りカードやノートに暗記事項をまとめ、繰り返し学習する。図書館などで様々な本に目を通し、知識を充実させて行く。何を聞かれてもそこそこ答えられるようにしておくことが、必須科目、選択科目とも必要だと思います。
①入門書・基本書
地盤工学会「土質工学入門」
彰国社「わかりやすい土木講座6・土質工学」土木学会編集
山海堂「新稿土質工学」松尾新一郎
その他、高校の教科書にも良いものがあるようです。
②参考書
オーム社「土質力学」近畿高校土木会
山海堂「技術士を目指して・建設部門・選択科目第1巻・土質及び基礎」中村靖
地盤工学会「土質工学用語辞典」
近代図書株式会社「最新の軟弱地盤処理工法」福岡正巳
近代図書株式会社「現場技術者のための最新の基礎工法」中島武ほか
総合土木研究所・月刊専門誌「基礎工」
(2)測量学
野外での実際の測量技術(外業)と、データ処理(内業)とから出題される科目です。大学では簡単な測量技術について学んだだけだったので、かなり勉強しました。70~80点くらいはとれたと思います。最終的には、様々な測量技術について、どんな器具を用いて、何を測定して、その測定結果をどのように活用するかについて一貫して説明できるようにしておく必要があると思います。また、全体を大きく把握することが必要であり、細かい部分(例えば写真測量についての複雑な計算など)は思い切って捨てる勇気を持つことが必要です。
1から始めるのであれば、なるべく薄い本(佐島などが昔から基本書とされている)を買ってきて、目を通し、全体像をつかむ(100講の中の1~60講くらいの例題だけ解いて行くのも良いと思います)。その後10年分程度の過去問(あまり古い問題は後回しにして良いと思う)に目を通し、出題傾向を確認した上で、実際に問題がすらすらと解けるようになるまで、計算練習や公式、用語の暗記を繰り返し行う。
測量学の良いところは、資料、本が全国どこでも比較的容易に手にはいることです。
①基本書
コロナ社「測量(上)(下)」佐島秀夫ほか
山海堂「測量士補100講」中川徳郎ほか
②参考書
朝倉書店「測量学Ⅰ、Ⅱ」春日屋伸昌
森北出版「測量の誤差計算」岡積満
(3)農業機械学
最後の1科目が決まらず、商品学、原子核工学、金属加工学なども考えた上で、土関係であり、なじみやすそうだったので農業機械学を選択しました。運良く70~80点はとれたと思います。また、向き不向きがある科目だと思います。どうせ実際の試験では細かい部分を書くことができないので、細かい部分は省いて、機械の概要を学習すること、またどの本を読んでも機械の具体的な動作については簡単にしか書かれていないので、ある程度自分で動作を想像して、人に説明できるようになっておくことが大切です。実務や農作業などで機械に実際に触れることがあれば尚良いと思います。
1から始めるのであれば、耕うんから収穫、その他の機械が一通り載っている本を基本書とし、学習した後、他の本を流し読みし自分に不足している知識を補充して行くのが良いと思います。また、出題傾向を把握し、出題頻度が低いところは後回しにするのがよいと思います。
①基本書
文永堂出版「新版農作業機械学」川村登ほか
文永堂出版「新版農業機械学」川村登ほか
文永堂出版「新版農産機械学」山下律也ほか
②参考書
養賢堂「新編農業機械学概論」庄司英信
朝倉書店「新農業機械学」石原昴ほか
コロナ社「生物生産機械ハンドブック」農業機械学会編
5.おわりに
最後になりましたが、Y塾のO塾長、S先生をはじめ、Y塾のスタッフの方々には合格までたいへん御世話になり、ありがとうございました。また、K先生、S先生には公私共々たいへん御世話になりました。更に働きながら勉強をしていた私を暖かく見守ってくださった職場の皆様、良き友人に心より感謝します。
そして、受験勉強を2足目、3足目のわらじとしながらも一生懸命に勉強されている方が平成10年度の合格者となることを心より祈っています。私の友人が教えてくれた、「涙のうちに種蒔く者は、喜びのうちに刈り取る。」(出処は忘れました)という言葉で終わらせて頂きます。
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(以上、1997年の合格体験記より若干修正したものを掲載)
【補遺】
今考えると、各2時間×合計8科目=計16時間の一週間に及ぶ2次試験を、ほとんどの人が仕事を持ちながら受験していたこと(しかも1次試験に受からないと2次試験は受験できないし、1次試験に受かるのがまた相当に難しかった。論文試験も、各科目に対しての解答用紙は10枚綴りの冊子が2冊であり、1問に対して記載すべき解答の分量も多かったものと思う。)や、そんな過酷な試験の合格率が3%ぐらいで、年間に100人強の人しか弁理士試験に合格できない時代があったことなどが夢のように思えます。(このあたり、実際に当時の受験を経験された方は同じような考えかと思います。過酷な時代でした。時代は移り変わってゆくものですが、当時の合格者の方々の「重い」合格体験記を再読しながら、改めて敬意を表します。)
椿特許事務所
弁理士TY