35 U.S.C. 102 Conditions for patentability; novelty and loss of right to patent.
A person shall be entitled to a patent unless
(c)he has abandoned the invention, [or]
【趣旨】
本条項は、
・審査対象の発明がすでに放棄されている場合、その審査対象の発明は特許を受けることができない旨
を規定する。
【解析】
(1) 普通の審査実務ではあまり用いられない条項であると思われる。特許の再発行(Reissue)によるクレーム拡張の制限などと、根底の思想を同一にするものと思う。
(2) すなわち本条項は、エストッペル(禁反言)の反射的効果を確認する条項である。例えばpublic domainに一旦所属した権利は、原則として再取得(recapture)できない。フリーソフトウェア、コピーレフト、クリエイティブ・コモンズなどにおいて、創作者の権利の一部または全部の放棄を明示する行為は、本項の「放棄」に関連するものと思う。
(3) また、(a)発明が一定期間特許出願されない場合、または、(b)特許出願されながらクレームには記載されていなかった場合、その発明放棄の意思が推定されることとなる(判例法による)。但し「推定」なので、反証をもって覆すことは可能である。たとえば前者(a)であれば、病気により出願できなかったなどの特殊事情がある場合など。
(4) 上記(3)(a)の期間は、約2年ぐらいと昔聞いた覚えがあるが、詳細は最新の判例に従うこと。
(5) 上記(3)(b)に関しては特に、出願手続き中にクレームを減縮することで放棄した部分(特許性がないものと出願人が認めた部分)などが該当するものと思う。特許の再発行(Reissue)について定めるMPEP1412.02(Recapture of Canceled SubjectMatter)の「A reissue will not be granted to “recapture” claimed subject matter which was surrendered in an application to obtain the original patent.」などの記載も、本項と同様の思想に基づくものと思う。(”abandon”も”surrender”も「放棄」と思うが、ニュアンスの違いがあるのかもしれない。後者は「降参して諦めた」、前者はもっと自発的に放棄したようなニュアンス(?))
(6) 勿論、結局は出願人(または発明者)がどのような意思を持っていたのかによって「放棄されたのか否か」は判断されるべきであり、形式的に(外形的行為から一義に)判断されるものではない。例えば、特許出願A(クレームA)を行ない、その数日後に同一実施例での特許出願B(クレームB)を行なったとき、特許出願Aで「B」がクレームされていなかった、というだけの理由で「発明が放棄された」と判断されることはないものと思う(そもそもクレームBは、特許出願Aでのクレームアップや分割出願が認められるクレームである)。
椿特許事務所
[弁理士TY]