クレームされた発明とは矛盾する実施例が明細書に記載されているにもかかわらず、実施可能要件は満たされていると欧州特許庁技術審判部が判断した事件
T0990/07 携帯端末装置事件 Fujitsu limited 2010/2/23
A.背景
(1) 出願明細書の内容
この出願に係る発明は、アンテナを内蔵する携帯端末装置に関するものである。
参考図1は、この出願の図3であり、従来のアンテナ5を拡大して示すものである。参考図1を参照して、従来、携帯端末装置に内蔵されるアンテナ5は多層のフレキシブル基板を利用しており、アンテナとして機能するアンテナ配線11はスパライル形状(らせん形状)にパターン形成されることによりヘリカルアンテナを構成している。そして、アンテナ配線11の各端部は、コネクタ部12に引き出され、このコネクタ部12がプリント配線基板に接続される構成とされている。
上記のように一枚のベース材10上にスパライル形状のアンテナ配線11を形成し、かつアンテナ配線11の各端部を共にコネクタ部12に引き出す構成であると、必然的にアンテナ配線11が交差してしまう部位(交差部13)が発生する。
この交差部13において、交差する各アンテナ配線11は絶縁して短絡が発生しないよう構成する必要がある。このため、従来ではアンテナ5として多層のフレキシブル基板を利用し、交差するアンテナ配線11を異なる層に形成することにより短絡の発生を防止する構成とされていた。
参考図1(図3)
参考図2(図9)
参考図2は、この出願の図9であり、実施例のアンテナ25を拡大して示している。参考図2に示すように、本実施例に係るアンテナ25は、フラットケーブル構造を有しており、樹脂よりなるベース材30の片面にアンテナ配線31が形成された構成とされている。アンテナ25は、複数のアンテナ配線31がそれぞれ独立しており(互いに電気的に接続してないことをいう)、互いに平行なパターンとなっている。
参考図3(図7)
参考図4(図8)
参考図3はこの出願の図7であり、参考図4はこの出願の図8である。これらの図は、アンテナ25と多層プリント配線基板26との接続構造を示している。
参考図3および4を参照して、本実施例では、アンテナ25を多層プリント配線基板26に対して立てた構成としている。このため、アンテナ25に折曲部39を設け、多層プリント配線基板26との接続位置近傍においてコネクタ部32が多層プリント配線基板26と略平行となるよう構成している。
参考図2に示されたアンテナ25の3本のアンテナ配線31のうち、最上部に位置するアンテナ配線31の端子A1は、多層プリント配線基板26に形成された配線パターン46、ビア42a、内層40、ビア42b、および配線パターン47を介して、参考図2中最上部に位置するアンテナ配線31の端子C2と接続されている。つまり、参考図2中最上部に位置するアンテナ配線31は、多層プリント配線基板26に形成された配線パターン46、40、47とともに1つのループを構成している。同様に、参考図2中中央部に位置するアンテナ配線31は、多層プリント配線基板26に形成された配線パターン48、41、49とともに1つのループを構成しており、参考図2中最下部に位置するアンテナ配線31は、多層プリント配線基板26に形成された配線パターン51、52および電子部品27とともに1つのループを構成している。
ここで注目すべきは、参考図4の実施例のアンテナ配線は、参考図2および3を考慮すると、スパイラル形状(らせん形状)になっていない点である。すなわち、参考図4の実施例のアンテナ配線は、互いに絶縁された3つのループ形状(環状)の構成にされている。なお、この出願の図11には参考図4(図8)の変型例が開示されているが、図11にも、互いに絶縁された3つのループ形状の配線が示されている。
(次回に続く)
椿特許事務所
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【日誌】
欧州特許とは関係ありませんが、欧州関連のニュースとして、サッカーのワールドカップ、日本-デンマークの試合が日本時間の本日(2010年6月25日)未明に行われ、日本が3-1で快勝。日本は、E組の2位で1次リーグを突破し、決勝トーナメント進出を果たす。ヤッタ!!さすがに今日は寝不足の方も多いのではないでしょうか?(決勝トーナメント、パラグアイ戦は、6月29日(火)日本時間PM11時~。まだ目指すべき道程は長い!)
最近では、小惑星探査機「はやぶさ」の快挙もありましたが、いつの時代でも、日本には、世界を驚かせることをやり遂げる国であり続けて欲しいと思っています。
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