弁理士の仕事の1つとして、「生まれた発明(アイデア)を特許で保護する」、という仕事があります。
生まれた発明は、発明者にとってはわが子のように可愛く大切なものであり、また、経済的側面からみると貴重な財産でもあります。
生まれた発明をどうすればより上手く保護できるか考え、発明をよりよい権利に成長させてゆくこと、財産権としての価値を高めることは、専門知識と経験とがものを言う世界であり、弁理士各々の能力に左右されます。この点をよく理解している弁理士は責任感が強く、人知れず能力(知識、経験)を磨いており、その仕事を見ると、生まれた発明やお客様(発明者、出願人)に対する愛情が感じられます。また、作成する書面1件1件に心や魂が込められており、様々な努力と工夫とがなされていることがわかります(そしてそれは、一般の方にはなかなか理解され難いものです)。
元メカトロニクスエンジニアの見ル野 栄司さんの「シブすぎ技術に男泣き!」(中経出版)は、一般の方にはなかなか理解されない技術者の苦労や熱い思いを綴ったコミックエッセイであり、電気回路、スピーカー、テレビ、地層探査装置、製麺機、ゲーム機、等々の開発の秘話とその苦労とが面白おかしく紹介されています。
よいものを作りたい、一般の人にとっては見え難くなかなかわかってもらえないところでも、手を抜かずにしっかりとした仕事をやりたいという「モノ作りの誠意」、製品やお客様に愛情を持つことなど、技術者の熱い思いやその苦労と職人気質が伝わってくる、よい本であると思いました。
苦労して作った製品はわが子そのものであり、人と人とを結びつけるかすがいとなることや、苦労して作った製品の納品は、手塩にかけた娘の嫁入りのように感じることなどが本書には書かれています。私の作る「製品」の1つは「特許明細書」ですが、生まれた発明から特許明細書を作成し、それを特許出願として世の中に送り出し、立派な権利とするまでの仕事でも同じような気持ちとなります。愛情と誠意をもって今後も仕事をしてゆきたい(いい意味での「職人気質」を持った弁理士として仕事を続けてゆきたい)と思いました。
椿特許事務所
弁理士TY