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10月2日。K特許研究会のソフトウェア研究部でのK弁理士の講演で、米国ビジネス方法特許関連(保護対象)でCAFCで争われているケースについて教えてもらったので、備忘録としてメモする。
In Re Bilskiと称されるケースであり、ハードウェア装置を構成としない純粋なビジネス方法を含みうるクレームについて、特許で保護すべきかが争われている。現在、大法廷でヒアリングが行なわれ、年内くらいに判決がなされる模様。
争点となったクレームは以下の通り(出願番号08/833,892)。
1. A method for managing the consumption risk costs of a commodity sold by a commodity provider at a fixed price comprising the steps of:
(a) initiating a series of transactions between said commodity provider and consumers of said commodity wherein said consumers purchase said commodity at a fixed rate based upon historical averages, said fixed rate corresponding to a risk position of said consumer;
(b) identifying market participants for said commodity having a counter-risk position to said consumers; and
(c) initiating a series of transactions between said commodity provider and said market participants at a second fixed rate such that said series of market participant transactions balances the risk position of said series of consumer transactions.
以上のように、装置の限定がなく、純粋な人間の精神活動をも含むクレーム形式になっている。卸売り価格が変動しうる商品のリスクを減らすためのヘッジ取引に関するもの。販売者が顧客に商品を第1の固定価格で販売したときに、第2の価格でヘッジとなる取引を開始する、というものか。出願は、10年以上前。
USPTOは2006年に、Bilskiの方法は、抽象的なアイデアにすぎないので特許の保護対象ではないと判示した。この審決をめぐって、2007年にCAFCに提訴がなされた。
CAFCは大合議において、以下の問題における補助的書面の提出を求めた。またamicus briefs(第三者の意見陳述書)の提出を求めた。
(1) Whether claim 1 of the 08/833,892 patent application claims patent-eligible subject matter under 35 U.S.C. § 101?
(2) What standard should govern in determining whether a process is patent-eligible subject matter under section 101?
(3) Whether the claimed subject matter is not patent-eligible because it constitutes an abstract idea or mental process; when does a claim that contains both mental and physical steps create patent-eligible subject matter?
(4) Whether a method or process must result in a physical transformation of an article or be tied to a machine to be patent-eligible subject matter under section 101?
(5) Whether it is appropriate to reconsider State Street Bank & Trust Co. v. Signature Financial Group, Inc., 149 F.3d 1368 (Fed. Cir. 1998), and AT&T Corp. v. Excel Communications, Inc., 172 F.3d 1352 (Fed. Cir. 1999), in this case and, if so, whether those cases should be overruled in any respect?
なお、Board of Patent Appeals and Interferences(BPAI)の審決は、
http://www.uspto.gov/web/offices/dcom/bpai/its/fd022257.pdf
コートオーダーは、
http://www.cafc.uscourts.gov/opinions/07-1130%20order.pdf
で入手可。
【個人的見解】
本件は最高裁まで争われるのではないかと思う。その判断においては、米国憲法に従い、「このような発明を保護することが、未来の米国にとって有利となるか、不利となるか」がメルクマールとなるのであろう。このような特許が外国人に取得されると米国経済にマイナスに働くかも知れないし、逆に米国人にこのような特許を取得させることで、外国人に対する牽制になるかもしれない。金融商品の分野で米国は進んでいるので現時点ではこのような特許を成立させることは、米国人にとって比較的有利であるという見解もあるだろう。また、パテントトロールの問題にどう対処すべきかも考えないといけない。さらに、他の国においては特許として成立しないクレームであることも考慮に入れないといけない。
【クイズ】
以上のようにアメリカ人は、未来の米国の利益となるか否かを指標として結論を出すものと思う。(ちなみに筆者は、クレーム1は特許として認めないことになると予想する(多くの方がそう思っているのではないかと思う)。)
では以上のような事案が日本で生じた場合、日本人が判断を迫られることとなったら、どのように結論を出すべきか?
【正解】
日本人であれば、まず「上司に相談します。」と言うべき。(冗談)

Post Author: tsubakipat