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平成11年(ワ)第1346号 損害賠償請求事件(アッセ株式会社v.マイクロソフト株式会社)
【特許の内容】
 第1特許権:キャラクタ弓型配列特許(特許番号第2613766号)
 発明の名称:「版下デザイン装置」
 (クレームの構成要件)
 ① 描画すべきキャラクタ列の各キャラクタデータを入力する手段と、
 ② 上記キャラクタ列を弓型に配列すべきことが指定されているとき、上記キャラクタ列のうち最初のキャラクタの描画始点を表す第一点の位置と、上記キャラクタ列のうち最後のキャラクタの描画終点を表す第二点の位置と、描画すべき弓型配列の高さを表す第三点の位置とを指定するデータを入力する手段と、
 ③ 上記第一点から上記第三点を通って上記第二点に至るまでの円形又は楕円形の一部を表すキャラクタ配列軌跡を演算する手段と、
 ④ キャラクタ配列軌跡上に上記キャラクタ列の各キャラクタを割り付けると共に、当該割り付けられた各キャラクタの大きさ及び回転角を決定する手段と、
 ⑤ 上記キャラクタ列の上記割り付けられた一つのキャラクタと、次のキャラクタとの関係で、間隔を変更するか否かを判断する手段と、
 ⑥ 間隔の変更が必要であるとの判断結果が得られたとき、上記次のキャラクタを所定量だけ移動させる手段と
 ⑦ を具えることを特徴とする版下デザイン装置
(第2、第3特許に関しては省略)
【イ号物件】
イ号物件一
 マイクロソフトオフィスに含まれるワードアートにおいて、キャラクタを楕円又は円軌道上に配列するためのプログラムを、コンパクトディスク盤上の所定のアドレス位置にピットの形態又はハードディスク上の所定のアドレス位置に磁化領域の形態で固定記録させた記録媒体
(イ号物件二、三については省略)
【主な論点】
(1)イ号物件、またはイ号物件を組み込んだコンピュータは、クレーム構成要件を充足するか。
(2)間接侵害の成立性。
(3)イ号物件の特定の程度(立証の程度)。
【判決】
・原告請求を棄却(控訴審へ)
・(1)、(3)に関しては、「イ号物件がクレーム構成要素を充足していることを認めるに足りない」、「充足することが立証されていない」ことが主な理由。
・(2)に関しては、「そもそも原告の第一特許発明及び第三特許発明1、2は版下デザイン装置、また第二特許発明は版下デザイン方法であるのに対して、イ号各物件は、文書処理のための汎用プログラムを固定記録させた記録媒体の一部であって、これを組み込んだパソコン等の機器は、汎用文書処理装置であって「版下デザイン装置」ではなく、また、右機器により実現される方法は「汎用文書処理方法」であって、「版下デザイン作成方法」ではない。したがって、イ号各物件は、第一特許発明及び第三特許発明1、2との関係では特許法一〇一条一号にいう「その物の生産にのみ使用する物」ではなく、第二特許発明との関係では、同条二号にいう「その発明の実施にのみ使用する物」ではないから、間接侵害を構成するものでもない。」と判示。
【実務メモ】
(1)「演算方法」など目には見えない部分を特徴とする特許権の侵害立証の困難性について理解する。訴訟提起前に、立証の可能性(および、そもそも本当に侵害していると主張できるのか)については十分に判断する必要がある。
(2)明細書作成時には、人間の目に見える「結果」で発明を特定できるクレームの作成を配慮する(勿論、先行技術からそれが難しい場合もある)。
(3)間接侵害に関して現在では、「プログラム」を対象としたクレーム起草が可能になっているので、今後本件のような論点は減ってくるものと思われる。「一太郎事件」(H17. 2. 1 東京地裁 平成16(ワ)16732)も参照のこと。
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【日誌(ログ)】
昨日は、明るく魅力的な弁理士であるT先生にお越し頂き、TM実務について授業をして頂く。一緒にハービス地下でパスタを食べる。久しぶりに楽しい昼ご飯。(最近は、大阪駅前ビルの地下食堂で一人寂しく食べていることが多い)。T先生、暑い中、貴重な時間を本当にありがとうございました。
所員NMは、研修のため天満研修センターへ(暑い中、お疲れ様でした)。仕事に溺れるだけでなく、皆毎日、少しずつでもいろいろな情報を吸収してゆけたらよいなと思う。
椿特許事務所
弁理士TY

Post Author: tsubakipat