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特許戦略を成功させるためには、「よい発明」を生み出すことと、「よい明細書」を作成することとの両者が必要です。本日は、その点についてお話しします。
通常、特許を得てそれを活用するために、以下のプロセスをたどります。
(ア)発明(アイデア)誕生・発掘 → (イ)明細書等作成(書面化) → (ウ)特許出願 → (エ)中間処理(拒絶理由対応) → (オ)登録料納付 → (カ)特許取得 → (キ)権利の活用(自社製品保護、ライセンス)
一般に、上記(ア)は「発明者」(研究開発者、アイデア提供者、開発会議出席者、「必要は発明の母」の状況にある方など)によってなされ、上記(イ)は、弁理士によってなされます(もちろん、能力のある「発明者」は、上記(イ)のプロセスにも関与することができますし、能力のある弁理士は、上記(ア)のプロセスにも関与することができます)。
上記(ア)おける「よい発明」としては、時代を先取りしている発明(アイデア)、ちょっとしたことではあるが多くの人が使いたくなるアイデア、将来の世の中や我々の生活を変えることとなるような発明、地球環境問題や人類の課題を解決する発明、体の不自由な方の不自由を取り除く発明、事業を模倣から堅く守ってくれる発明、ライセンス料が多く稼げる発明など、様々なカテゴリーがあります。
よい発明が生まれたとしても、特許庁での発明の審査は、あくまでも上記(イ)のプロセスで書面化された、明細書等に基づいて行われます。また、特許権の内容や効力が及ぶ範囲も、書面化された明細書等に基づいて画定されます。
すなわち、上記(ア)のプロセスでいくらよい発明が誕生しても、上記(イ)のプロセスにおいて、「よい書面化」ができなければ、せっかく誕生した発明が台無しになってしまいます。
逆に、(イ)のプロセスにおいて付加価値のある「書面化」ができれば、誕生した発明はよい方向に育ってゆきます。
付加価値のある「書面化」とは、発明をその原理から捉えてそれを漏れなく記載すると共に、発明を異なる側面から見てそれを記載すること、発明や実施例の更なるブラッシュアップを行い、実施例・変形例を充実させてゆくなどの作業です。また、発明に比較的近い先行技術が見つかった場合には、発明と先行技術との差異が明確になるように、特許請求の範囲などを記載しなければなりません。
さらに、新たな先行技術が将来に見つかる可能性を考えて、特許請求の範囲を将来うまく補正・訂正するための事項を明細書には記載しておく必要があります。
このような作業により、権利行使・ライセンスに耐えうる明細書やクレーム(模倣を防ぐことができる「強い明細書」(よい明細書))が作成されます。また、このような作業から新たな発明が生まれ、上記(ア)にフィードバックされることもあります。
「よい明細書」の作成は、それ自体が1つの技術であり、経験と知識(法律知識、裁判例の知識、科学技術などの理科系知識、審査基準の知識、中間処理、ライセンス交渉、訴訟などの実体験、文章の作成技術、本人の注意深さなど)が必要とされる作業です。また、明細書作成を行う者の能力差が、最終結果物に明確に現れる作業です。
特許は財産権であり、また、それは事業や会社を唯一無二のものとする上で極めて重要な財産です。「よい発明」の創設を狙い、また、その価値を高める「よい明細書」の作成を追求することで(「よい発明」と「よい明細書」の両者の観点を見据えて、価値ある特許出願を行うことで)、将来の事業の成功がサポートされてゆくものと思います。
椿特許事務所
弁理士TY

Post Author: tsubakipat