(前回より続き)
ITです。
日記その3を送ります。日記その2に続けて送ろうと思いましたが、
今回はまじめな内容で、筆が進まなかったので、少し遅れました。
でも次回の日記はRocky Gapなので・・・・
2009.6.16 法定の発明とIDS
今日は法定の発明と情報開示義務について講義を受けました。米国特許法第101条には、プロセス、機械、生産物、組成物、またはこれらの改良を、発明または発見した者が、特許を得られると規定されています。この規定は保護対象に関してあいまいさを含んでいるので、しばしば発明が保護対象となり得るか否かが議論されています。具体的には、ゴルフのパター方法に関する発明(米国特許第5,616,089号)、動物のおもちゃ(木の枝)に関する発明(米国特許第6,360,693号)などです。
続いて、ビジネスモデルについての特許性が初めて認められたState Street Bank事件についての説明があった後、最近話題となっているBliski事件に関する説明がありました。Bliski事件では、ハードウェア資源を全く用いないビジネス方法(金融商品の取引方法)が特許になるか否かが争われています。この事件は現在最高裁に係属しているため、まだ結論が出ていません。
情報開示義務とは、出願に関わるすべての人が、出願時から特許証の発行時までの間、特許性に影響を及ぼす(materialな)情報を米国特許庁に開示しなければならないという義務です。「悪意で」情報開示義務を怠ったことが係争時に認められると、権利行使ができなくなります。情報開示義務は、出願人のみならず、出願に携わる代理人にも及ぶ点には注意しなければなりません。
2009.6.17 新規性
今日は新規性、すなわち米国特許法102条について講義を受けました。特に102(e)の話は、非常に難しかったものの、ためになりました。ここでしっかり復習しておきます。
国際出願に関して、国際出願日が102条(e)で規定される先願としての基準日となるためには、①2000.11.29以降に出願されたこと、②英語で国際公開されたこと、および③米国を指定国としていること、が条件となります。
通常、日本の出願人による国際出願は日本語で国際公開されますので、②の条件に当てはまらず、国際出願が米国の国内段階に移行されて特許公報が発行されたとしても、102(e)で規定される先願とはなり得ないことになります。このように複雑な規定となっているのは、米国政府が、パリ条約を遵守しつつ、自国の特許出願人を他国の特許出願人よりも有利に扱おうとしているためであると推測されます。
もちろん、日本の出願人であても、仮出願の制度を利用したり、国際出願を英語ですることによって、102(e)に関する不利を解消することはできできます。しかし、手続きが煩雑になるため、そのような方策を採っている日本企業は少ないように思います。
2009.6.18 進歩性
今日は進歩性について学習しました。
米国特許において進歩性となると、2年前のKSR判決を真っ先に思い出します。しかしKSR判決は、従来のTSMテスト(つまり、組合せを教示(teach)、示唆(suggest)または動機付ける(motivate)ものが先行文献に記載されているか否かによって、引用文献同士の組合せが自明であかどうかを判断するテスト)を否定したわけではなく、TSMテストも進歩性判断の基準の一つとして依然として重要です。
また、KSR判決以後進歩性の判断では、予期できない効果(unpredictable result)の有無が重要となっています。講義の後半では、具体的に身近な発明(たとえば、こぼした食べ物を収納するためのポケットの付いた赤ちゃんのよだれ掛け)を用いて、その発明が2つの先行技術(普通の赤ちゃんのよだれ掛け+洋服のポケット)によって進歩性を阻害されるか否かをどのように判断すべきかを学びました。講義は指名されて答える方式であったため、自分の考えをうまく英語で話すことが非常に難しいことを実感しました。
また、講師の先生は、1st O.Aの応答時に審査官との面接を積極的に利用することを勧めていました。米国特許庁には非常に多数の審査官がおり、技術的な理解や進歩性の判断基準が審査官によってばらばらなようです。このため、面接において発明を審査官に技術的に説明することで、審査官による不当な判断を避けるという意味があるようです。
授業後、Rocky Gap http://www.rockygapresort.com/というワシントンDC近郊にあるリゾート地へ向けて出発しました。
(次回に続く)
椿特許事務所
弁理士IT