Site Loader

JPO審査基準より抜粋
⑷ 除くクレーム
「除くクレーム」とは、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、補正により当初明細書等に記載した事項を除外する「除くクレーム」は、除外した後の「除くクレーム」が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである場合には、許される。
なお、次の(ⅰ)、(ⅱ)の「除くクレーム」とする補正は、例外的に、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと取扱う。
(ⅰ)請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)を失う恐れがある場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該重なりのみを除く補正。
(ⅱ)請求項に係る発明が、「ヒト」を包含しているために、特許法第29条柱書の要件を満たさない、あるいは、同法第32条に規定する不特許事由に該当する場合において、「ヒト」が除かれれば当該拒絶の理由が解消される場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該「ヒト」のみを除く補正。
(説明)
上記(ⅰ)における「除くクレーム」とは、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、特許法第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る先行技術として頒布刊行物又は先願の明細書等に記載された事項(記載されたに等しい事項を含む)のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
(注1)「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができるのは、先行技術と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する発明であるが、たまたま先行技術と重複するような場合である。そうでない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶の理由が解消されることはほとんどないと考えられる。
(注2)「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、留意が必要である。
上記(ⅱ)における「除くクレーム」は、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、「ヒト」のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
このような取扱いとする理由は、以下の通りである。
①たまたま先行技術と重複するために新規性等を欠くこととなる発明について、このような補正を認めないとすると、発明の適正な保護が図れない。そして、このような場合、先行技術として記載された事項を当初の請求項に記載した事項から除外しても、これにより第三者が不測の不利益を受けることにもならない。
②「ヒト」を包含するために、特許法第29条柱書の要件を満たさないか、あるいは同法第32条に規定する不特許事由に該当する場合、「ヒト」を除く補正をしても、除かれる範囲は明確であり、かつ、これにより当該拒絶の理由が解消される。また、これにより、特許を受けようとする発明が明確でなくなることはない。
(具体的事例)
(ⅰ)の例:補正前の特許請求の範囲が「陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤」と記載されている場合において、先行技術に「陰イオンとしてCO3イオンを含有する無機塩を主成分とする鉄板洗浄剤」の発明が記載されたものがあり、その具体例として、陽イオンをNaイオンとした例が開示されているときに、特許請求の範囲から先行技術に記載された事項を除外する目的で、特許請求の範囲を「陽イオンとしてNaイオンを含有する無機塩(ただし、陰イオンがCO3イオンの場合を除く)……」とする補正は、許される。
(ⅱ)の例:補正前の特許請求の範囲が、「配列番号1で表されるDNA配列からなるポリヌクレオチドが体細胞染色体中に導入され、かつ該ポリヌクレオチドが体細胞中で発現している哺乳動物」と記載されている場合、発明の詳細な説明で「哺乳動物」についてヒトを含まないことを明確にしている場合を除き、「哺乳動物」には、ヒトが含まれることになる。しかし、ヒトをその対象として含む発明は、公の秩序、善良の風俗を害する恐れがある発明に該当し、特許法第32条に違反するものである。このような場合に、特許請求の範囲からヒトを除外する目的で、特許請求の範囲を「……非ヒト哺乳動物」とする補正は、出願当初の明細書等にヒトを対象外とすることが記載されていなかったとしても許される。
【個人メモ】
審査基準の「⑷ 除くクレーム」における、「事項」は、技術的事項(もしくは技術的思想、発明、またはクレームのカバーする領域(「技術的範囲」))を指しており、審査基準の他の個所での「事項」が、明細書などの記載事項そのもの(または、発明を特定するための事項)を指している点で混乱がある。
現行特許法上、「事項」の文言は後者の意味で用いられており(例えば36条5項、64条2項4号)、本来、補正・訂正可能な範囲に関しての「記載された事項」も、後者の意味を示していた。
(審査基準と、ソルダーレジスト「除くクレーム」事件判決とでの考え方の違い)
審査基準が、「特許法の例外」を定めようとしたものか否かはさておき、
(1) 審査基準では、「請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)を失う恐れがある場合」と、除くクレームの補正を一定下の条件で認めるように読めるのに対し、ソルダーレジスト「除くクレーム」事件判決では、その条件を課していない点、
(2) 審査基準では、許容される除くクレームが「補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、特許法第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条に係る先行技術として頒布刊行物又は先願の明細書等に記載された事項(記載されたに等しい事項を含む)のみを当該請求項に記載した事項から除外する」ものであるとし、先行技術の内容が補正の内容的な制限に影響を及ぼしているのに対して、ソルダーレジスト「除くクレーム」事件判決では、先行技術の内容が補正の内容的な制限に直接の影響を及ぼすものではないと考えている点、
で両者の考えは異なっている。
椿特許事務所
弁理士TY

Post Author: tsubakipat