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平成10年(行ケ)第298号 実用新案権取消決定取消請求事件
【争点】
実用新案登録請求の範囲を「記録及び/又は再生装置」から「ディスク記録及び/又は再生装置」と減縮する変更の適否が争われた。
【判旨】
「・・・同改正後の特許法120条の4第3項によって準用される同法126条2項により,本件登録実用新案の明細書又は図面の訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
同項は,願書に添付した明細書にも図面にも記載されていない事項を,訂正によって,追加することを禁止するものである(いわゆる新規事項の追加の禁止)。ある訂正が許されるか否かは,訂正請求に係る事項が願書に添付した明細書又は図面に記載されているとみることができるか否かに懸かることになる。そして,訂正請求に係る事項が願書に添付した明細書又は図面に記載されているとみることができるか否かは,訂正請求に係る事項と願書に添付した明細書又は図面に記載された事項との技術的事項としての対比によって決められるべき事柄であることは,明らかであるから,この判断に当たっては,単に,訂正請求に係る事項を示す語句と明細書の語句とを比較するだけではなく,訂正請求に係る事項,並びに,願書に添付した明細書又は図面に記載された技術的事項についても検討を加えた上で,訂正によって,願書に添付した明細書又は図面に記載されているとはみることができない技術的事項が付加されることになるか否かを,検討すべきである。」
「同訂正についての決定の判断は,訂正請求に係る事項につき,単にそれを示す語句と明細書の語句とを比較しただけで,それと願書に添付した明細書又は図面に記載された技術的事項との関係の検討をしないままになされたものというべきであり,決定が,同訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であるとはいえないとして,それを根拠に本件訂正請求を斥けたのは,誤りであって,・・・」
【条文】
特許法17条の2(補正)
3 第1項の規定により明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第36条の2第2項の外国語書面出願にあつては、同条第4項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあつては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
126条(訂正)(訂正の請求に関しては、134条の2第5項で準用)
3 第1項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同項ただし書第2号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあつては、外国語書面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
【メモ】
・補正と訂正は、共に願書に添付した明細書などに「記載した事項の範囲内」でしなければならない。この点、補正と訂正とで「記載した事項の範囲内」の考え方に差をつける必要はないと思う。(訂正請求の場合は対立当事者がいるのでより厳しい目で見られる、などの実務上の差異は別として。)
・本判決は、
 「記載した事項の範囲内」=明細書に記載された事項そのもの+それから直接的かつ一義的に導かれる事項
とする従来の特許庁の運用(審査基準)が、
 「記載した事項の範囲内」=明細書に記載された事項そのもの+当業者にとって自明な事項
に改められたきっかけの一つとなった判決だったと記憶している(審査基準の改正がH15.10.22。要確認)。
・「この判断に当たっては,単に,訂正請求に係る事項を示す語句と明細書の語句とを比較するだけではなく,訂正請求に係る事項,並びに,願書に添付した明細書又は図面に記載された技術的事項についても検討を加えた上で,訂正によって,願書に添付した明細書又は図面に記載されているとはみることができない技術的事項が付加されることになるか否かを,検討すべきである。」との判示により、語句に拘らず、実体的に判断すべき点が述べられている。
【日記】
北野武監督「アキレスと亀」を観る。映画では、子供のころから絵を描くことが好きだった、真知寿(まちす)の少年期、青年期、高年期が綴られる。創作が人一倍好きな真知寿は、少年期から他とは違っている。青年期にあっても社会に馴染めないところがあり、高年期に入るとその芸術への思い入れは、他から狂気に写るほどになる。芸術を実践するための反社会的行為が、世間から咎められる。描いた絵を売りに行っても、全く評価されない。真知寿の人生において身近にいる人が去って行く。それでも真知寿は創作を続ける。
傍目には壮絶な人生を選ぶ真知寿は、自分の選んだ道を生きていて幸せである。また、どんな時代にあっても彼を理解してくれる人が少数いることも幸せである。少年時代に心を通わすことができた友、青年時代の志を同じくした友、アルバイト先の店長、そして妻。
自分で選びとる人生、心を通わせることができる人-そういったものが本当に大切なのに、人はついついくだらないものばかり追い求めてしまう。
http://www.office-kitano.co.jp/akiresu/
椿特許事務所
弁理士TY

Post Author: tsubakipat