Site Loader

書店や図書館に行くと、面白い本がたくさんあって嬉しくなります。時間のフィルタをくぐり抜けることができた古い本によいものが多くありますが、最新の情報が詰まっている近年発行の本にも素晴らしいものがあります(私が学生の頃にこの本があったらよかったのに・・、と思う本も多い)。
2010年発行の「デジタル電子回路のキホンのキホン」(出版社: 秀和システム)もそんな本であり、昔の電子回路関係の書籍と違って、ユニークだったので紹介します。

デジタル電子回路のキホンのキホン―読んで作ってスッキリわかる!

デジタル電子回路のキホンのキホン―読んで作ってスッキリわかる!

  • 作者: 木村 誠聡
  • 出版社/メーカー: 秀和システム
  • 発売日: 2010/01
  • メディア: 単行本

この書籍のユニークなところは、「キホンのキホン」と謳いながら、第1章からいきなり「ICレコーダーの回路設計」についての記載が始まります。かといってハードルが高いわけでなく、読者の興味を引くように初歩的な話を取り混ぜながら、どうやったらICレコーダーを設計することができるのか、その設計思想、回路全体の概要の説明から始まり、その後(第2章以降)に、設計したICレコーダーを構成する各基本回路(記憶素子、AD/DA変換、クロック回路、ステートマシン、マンマシンインターフェイス関係など)の説明が続いています。
装置の全体像が設計・説明されてから、その各部が説明されている(トップダウン的に説明されている)ため、各部がどのように役立つのか、何故こんな回路が必要とされるのかが、読者によくわかるようになっています。この点で本書は、無味乾燥とした回路要素を順に説明してゆくだけの(あまり楽しいとはいえない)従来の教科書と大きく異なっており、筆者の工夫が感じられました。
現在でもなお、すさまじい進歩を続けているデジタル技術の現状を知りたい方、デジタル回路の特許明細書を書いているが基礎から学び直したい方、今のデジタル技術についていけていないような気がする方などにお勧めの書籍かと思います。
弁理士の仕事を続けていて思うのですが、弁理士にとって、文化系の知識(法律や判例、審査基準、外国語などの知識)と理科系の知識(科学・技術系の知識)とは、仕事をする上での重要な両輪であり、いずれが欠けていてもよい仕事をすることができないものと思います。
特に、よい明細書を書くためには理科系の豊富な知識が必要不可欠であり、知識があればあるほど、深く、説得力があって、強い明細書を書くことができるものと思います(そうなってくると、仕事が楽しくなる)。豊富な知識と発明の深い理解に基づいて仕事をしている人と、何となく仕事をしている人とでは、仕事の成果物に天と地ほどの差があると思います。
幸いにも今の時代、文化系・理科系ともに、よい書籍が数多く発行されています。また、使い方を間違えさえしなければ、インターネットもよい情報源となるし、様々な機材・部品も個人で簡単に入手して触れてみることができます。21世紀は、やる気さえあれば誰でも様々な知識を身に付けることができる、恵まれた時代となっています。私も、これからまだまだいろいろなことを学んでいきたいと思っています。
椿特許事務所
弁理士TY

Post Author: tsubakipat